エル ELLE

ひとりでいることはそんなに難しいことではない。

他人と一緒にいることの方が本当はよっぽど困難で労力を使うことだ、と思う。

でも周囲は一人きりでなんでもやってこなしていく姿に憧れを抱いてくれもするし、褒めそやしたり、時に嫉妬することもある。

実はひとりでいることで楽をしているだけでそれに劣等感すら感じているのに、むしろ他者には評価されることのギャップがたまに心に刺さる。

私は独りでいることをどこかで恥だと思っている。恥だと思いつつ、それを世間が評価するだろう見せ方を知っているから、そうなるよう仕向けることがある。そしてその行為にもっとも“さもしさ”を感じる。

 

「ELLE」という映画の主人公のミシェルは、そんな恥をさらすことを怖れない。

(たぶん)恥だとは思っていても、自分のしたいことをする強さがある。

それは見せかけのプレゼンではなくって、「そうするしかできないんだけど、なにか悪い?」という素直な開き直りの姿だ。

彼女の決断に他人は介在しないから、周囲は面喰うような場面に何度も何度も遭遇し、ふりまわされる。彼女が単なる悪人であれば、人に嫌な思いをさせたいという動機や行動傾向があるから対応もできるだろう。でも彼女は彼女自身のポリシーすら裏切って、その時その時の決断をしていくから、誰も止めることができない。

でも、他人に怯え合わせるようなふりをしながら結局は自分しか愛せない人より、すべては自分の尺度で他人も自分も好き勝手に愛する彼女が間違ってると誰が言えるのか?

 

私も他人の気持ちなんかおかまいなしに、でも本当に他人を愛せるようになりたいと思った。そうなればひとりでいることもきっと認められるようになる気がするから。