美しい星

最近、孤独な人の映画をたくさん観てる。『ムーンライト』、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』、『はじまりへの旅』、『20センチュリーウーマン』などなど。

まぁ映画なんてどれも孤独な人に寄り添ってるものだとは思うけれど、今年は「別に何か大きな事件が起きたわけでもないけどただ平凡に孤独な人たち」にフォーカスを当てた作品がとっても多い気がする。

そしてその中でも突出して孤独に飲み込まれた映画はこれでした。

吉田大八監督作『美しい星』。

ここの家族は皆似ている。みんな「かっこいいことを言いたいひとたち」だ。

しかも、夢見がちなとんだカス野郎というほどではなくむしろきわめて常識的な見識もあり、かつ世迷言を言ってもけっこうサマになっていて認めてもらえる手前まできているけれども、微妙に届かないひとたちだ。

そこに偶然にも言ってほしいことを言ってくれるひとがゾロゾロ現れて、とうとう特別な自分になれるかも、なりたい、なるんだ!…と奔走する。

この映画はとんでもなくカルトで奇抜で意味不明な映画に見えて実は、ほんとうにほんとうにあたりまえのにんげんの気持ちを描いてる。

だから劇中のおかしな展開に笑いながらも 、

『「あなたは特別」「あなたは選ばれた」そう言ってもらったとき、おまえは狂わないでいられるのか?いられないよな?というか選ばれないおまえはよっぽど救われないんじゃないのか?』

…という問いが頭の中で何度も繰り返され、どうしていいかわからない感情になった。

結局この家族は誰にも選ばれていなかったと私は思うけど、でも同時に生まれた時から選ばずとも選んでいた「家族」という者達が、実は一番身近にいたことを知ることになる。

それは最高のハッピーエンドだけど、裏を返せば彼らにはいつかは離れ行く家族以外、周りにいないのだ。

一人になっても、認められなくても、裏切られても、それでも生きていく力。それを自分で掴み取る方法は自分だけで考えなければいけない。

美しい星はそんな途方もない孤独と対峙しながらも全部受け入れて前を向くようなたくましい映画でしたた。